都市伝説がテーマのノベルゲーム『流行り神1・2・3パック』プレイレビュー
流行り神1・2・3パックのプレイレビューをお届けします。ホラーとしての傾向、クリアまでかかる時間等について記載。
流行り神ってどんなゲーム?
ゲームの傾向
- 都市伝説がテーマのテキストアドベンチャー
- チェーンメール、コックリさん等の都市伝説が関わる事件を巡る物語が展開
- オカルトルートと科学ルートに分岐
- 事件の原因を超常現象として進めるルートと、科学的に推理していくルートに分岐するシステム
- 1~3で主要人物が共通する続き物のシリーズ
- 主人公とその周囲の人物が共通している。時系列は前後する場合もある。基本的には1→2→3の順番でのプレイを推奨
- ミステリー色は強いが全てが明確にはならない
- ロジックでの推理が基本ではあるものの、科学ルートでも超常現象的な事象が大きく関わってくるため解釈の余地が残るストーリーテリング
流行り神は、2004年に日本一ソフトウェアから発売された、ホラーテイストのテキストアドベンチャーゲームです。流行り神1・2・3パックは、全三部作を全て収録しています。
初版以降に発売された改良版や移植版での追加ストーリー及びシステム改善が全て実装されているため、シリーズの最終決定版とも言えるパックです。
プレイヤー(主人公)は様々な都市伝説がテーマとなった怪事件に遭遇し、テキスト中の選択肢で物語を変化させながら、推理をして事件の真相を明らかにしていく……というのが大まかな流れ。
最大の特徴は、選択肢あるいは推理の方向性によって、「オカルトルート」と「科学ルート」に分岐し、物語の形も変化していくというシステムです。
都市伝説がテーマの怪事件を捜査
プレイヤーは、警視庁に勤務する警部補である主人公・風海純也として、様々な怪事件に遭遇します。
作中で登場する事件は、チェーンメール、コックリさん、心霊写真といった都市伝説や怪談がテーマで、ホラーテイストが強い内容となっています。
各ナンバリング毎に1話完結型のシナリオが複数収録されている構成となっており、1・2は全3話、3は全4話で、それぞれにチュートリアル的な第零話に加え、隠しシナリオと幕間のシナリオも用意されています。
1作あたり20時間ほどでクリア可能で、全シナリオ&テキスト回収をするなら30時間以上かかります。3作全てをやり込むなら100時間は超えるため、かなりのボリュームです。
オカルトか科学に分岐するシナリオ
本作の各章は、選択肢と推理の方向性によって、幽霊や呪いといったオカルト的な存在・現象を受け入れた上で進行する「オカルトルート」、あくまでも科学的・現実的な路線で推理していく「科学ルート」に分岐します。
分岐によって過程と結末は大きく変化し、章によっては事件の原因と真相も変わるため、物語そのものがまさに都市伝説のように姿形を変えていきます。
特定の正解に向かって進みつつも、「本当に正解はあるのか?」という不安と掴みどころのなさが常に付きまとい、都市伝説ゆえの「真偽不明」な世界に迷い込む感覚が、推理モノともホラーとも異なる独特な味わいを生んでいます。
推理ロジックで状況を整理
本作では、物語を進めている最中にいつでもアクセス可能な「推理ロジック」というシステムが採用されています。登場人物を把握して、空欄にキーワードを入れることで因果関係を推理しつつ、事件の要点をいつでも確認できます。
各章の最後で最終的な推理ロジックを決め、空欄のキーワードが真相に近いものであるほど、クリア時の評価が上がります。
全てが明らかにならないからこその不気味さ
流行り神のシナリオは、推理モノという形式をとってはいますが、全てが解決してスッキリ!とはいかないのがポイントです。
推理モノではあるものの超常現象が深く関わってきます。これは科学ルートを選んだ場合も同様で、「全てを科学で説明できるルート」というわけではなく、事件解決後も科学では説明しきれない「あれは一体なんだったんだ……?」というモヤモヤとした謎が残ります。
このモヤモヤが本作のシナリオを味わい深いものにしており、海外ドラマの「Xファイル」のような不穏な読後感を残してくれます。
クオリティの高いテキスト
本作はテキストベースで進行するいわゆるサウンドノベル形式のゲームです。
全体的にテキストのクオリティは高く、特に1作目はシリアスとコミカルさのバランス、メインキャラ達の魅力をしっかり表現できており、ライトながらも読み応えのある内容となっています。
癖の強い登場人物達
巨漢でオカルトが苦手な小暮さん。いわゆるコメディリリーフ
ギャンブル好きな上司・犬童蘭子
本作は、警視庁警察史編纂室(超常現象的な事件を担当する窓際的な部署)に所属する主人公とその同僚、監察医、民俗学者、ジャーナリストといったユニークな人物達が事件に遭遇することで物語が展開します。
この主要人物達が一癖も二癖もあって、物語を賑やかなものにしてくれます。
筆者のお気に入りは民俗学者の霧崎水明。人食ったような性格で、オカルト知識で主人公をサポートしつつ、本人は怪事件に関わることをどこか楽しんでいるような変人です。
豊富なロアを読めるデータベース
シナリオ中に登場する様々な都市伝説や怪談等のオカルト系キーワードは、全てゲーム内のデータベースに記録され、それ自体にしっかりと読み応えがあります。
「ベッドの下の斧男」といった有名な怪談が多数収録されており、それらがどういった経緯で生まれて広まっていったかまで事細かに解説されているため、馴染み深い怪談と都市伝説に関する知見を得られるのがオカルト好きには嬉しいポイントです。
オカルトに迫っていく異色のミステリーが魅力
ロジカルな推理を求められる推理小説的な進行&システムでありながら、幽霊、憑依、呪いといった現象が「人間がトリックでそう見せかけた」のではなく、作中で実際に存在するものとして真相を形成しているというのが、本作の大きな特徴です。
ホラーというジャンルは、全てがわかってしまうと興ざめしがちですが、本作では超常現象それ自体を解明・解決をするシナリオではないため、ホラーとしての良さを損なわないように絶妙に謎を残してくれます。
ロジックで考えた末に「これはもう超常現象の存在を認めるしかない……」という状況になった時のゾクゾク感は、本作ならでは。
ぜひプレイして、都市伝説の不穏な世界に足を踏み入れてみてください。